経常運転資金とは?融資を上手く利用する方法 ― 元銀行支店長がわかりやすく解説 ―

今回は、これまでのブログでも何度か触れてきた「経常運転資金」について、改めて詳しく解説します。

1.経常運転資金とは

経常運転資金とは、その企業が事業を行っていくうえで、回収と支払期間のギャップ、および保有しておかなければならない在庫量によって、「事業を継続する限り必要となる運転資金」のことです。
飲食業・小売店などの業種と、建設業などの業種では大きく異なってきますし、また同じ業種であっても、会社ごとに異なってきます。

計算式は次の通りで、貸借対照表上の数字から計算します。

売掛債権 + 在庫 -買掛債務

売掛債権とは、現在受取手形がほぼなくなったので、「売掛金」と考えていいでしょう。
在庫とは、「商品」「製品」「原材料」「仕掛品」等です。
買掛債務とは、ほぼ「買掛金」と考えていいでしょう。

具体的な数字で例示すると次の通りです。
売掛債権:20百万円
これは商品等を売上してから、回収して現金として使えるまでの債権が20百万円ある業態ということです。
在庫:10百万円
これは現在の事業規模では、10百万円の在庫を持っていなければならない、ということです。
買掛債務:12百万円
これは原材料等を仕入してから、現金として支払わなければならない債務が12百万円ある業態ということです。

経常運転資金:20百万円+10百万円-12百万円=18百万円

これは何を意味するかと言うと、「今、この会社は事業をしていくのに、18百万円の運転資金が必ず必要」ということです。

2.経常運転資金と資金繰りの関係

通常、経常運転資金は、売上高が増加すると増加します。
売上高が変わらない状況で、経常運転資金を減らす、つまり資金繰りを改善する方法は次の3つです。
①売掛債権を減らす → (例)売掛先に対して回収サイトを短縮するように交渉する。例えば月末締め翌々月末払いの売掛先に対して、翌月末払いにしてもらうよう交渉する。
②在庫を減らす → (例)適正在庫を見直し、余剰在庫や滞留在庫を減らす。あるいは、同じ品質でより安価に原材料を調達できないかも検討する。
③買掛債務を増やす → (例)売掛金とは逆で仕入先等の買掛先に対して、支払サイトを長期化するように交渉する。

ただし、これらについては注意を払わなくてはならない点がいくつかあります。売掛先に対して回収サイトを短期化する交渉は「それならもう取引しない」と言われないように留意しなければなりません。
また仕入先に対して支払サイトを長期化する交渉は「この会社、資金繰りが厳しいのかも。商品の供給を控えよう」と思われないように留意しなければならないでしょう。

3.融資を上手く利用する方法

現在銀行の融資スタンスは、基本的には運転資金であっても5年返済等の長期融資で対応することが多いです。
しかしそうなると、次第に借入の本数が増えて、毎月の約定返済額が増加し、銀行への返済で資金繰りが苦しくなるという状況になります。

私は銀行員時代、業績が安定して成長している先には、「経常運転資金は長期借入ではなく、融資当貸枠で調達した方が良い」と提案してきました。
融資当貸枠とは、例えば20百万円の融資枠を設定し、その枠内であればいつでも簡易な手続きで借入できるし返済もできるというもので、短期融資にあたるものです。
特徴としては、月々の約定返済が基本的には不要で、業況等に急変のない限り「借りっぱなしで金利だけ支払っていればいい」ということが可能です。

「月々の約定返済が多くなっていますね。他行で借りている長期借入を返済して、この融資当貸枠で借りっぱなしにしませんか?他行で借りておられる保証協会融資をこれで一括返済すれば、保証料も一部返ってきますし、いざと言う時に保証協会枠が空くので、また使えますよ。」というような提案をするのです。

実際に私が支店長をしていた頃も、毎月の返済負担が重く資金繰りに苦しんでいた企業に対し、長期借入の一部を融資当貸枠へ切り替える提案をしたことがあります。毎月の返済負担が軽くなったことで資金繰りに余裕が生まれ、経営者から「ようやく本業に集中できるようになった」と感謝されたことを今でも覚えています。

この提案は銀行にとってもメリットあるものです。銀行にとって融資は重要な収益源です。一方で、毎月多額の返済があるため、それ以上に新規融資を行わなければ融資残高は減少してしまいます。融資当貸枠で借りっぱなしにしてもらう=毎月の約定返済がないので、銀行にとっても都合のいい融資なのです。

ただし、反面毎月の約定返済がないということは、銀行にとってはリスクでもあります。その会社の業績悪化等により破綻した場合、損失額が大きくなってしまいます。
したがって、基本的には業績が安定している信用格付が高い正常先の会社の一部でしか、利用が難しいでしょうし、場合によっては不動産担保の提供等が条件になることもあります。

私の肌感覚で言えば、正直なところこのような提案ができる銀行や行員が減ってきているように感じます。
それゆえ、融資の毎月約定返済によって資金繰りが厳しい会社は、「融資当貸枠というのを聞いたが、当社は取扱いできるのか?」と聞いてみるのも一案でしょう。

また資金繰りという面で別の話をすれば、借入の本数が増えて、毎月の約定返済額で資金繰りが苦しい場合は、何本かをまとめて一本化するということも借入の内容により可能です。しかしそういう提案が銀行担当者からしてくることは多くありません。

資金繰りを改善するために借りた融資の返済が原因で、かえって資金繰りが苦しくなってしまうのは本末転倒です。実際には改善策はいくつもありますので、まずは銀行担当者に相談してみてください。それでも解決しない場合は、お気軽にご連絡下さい。

今回はここまでです。次回は「粉飾決算は銀行にばれるのか?」というテーマで解説したいと思います。

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