8.銀行の融資判断基準(返済能力)
銀行融資の審査では、「返済能力」も重要な判断基準のひとつです。
今回は、その「返済能力」について解説します。
「能力」というのは些か高飛車な銀行用語ですが、その企業が、融資金を返済できるかとうか、というような意味合いの言葉です。
銀行融資には大きく分けて、「運転資金」と「設備資金」があります。
銀行融資では、融資の目的によって、審査基準が異なりますので、種類ごとに解説してまいります。
1.運転資金
(1)経常運転資金
・経常運転資金とは、その企業が事業を行っていくうえで、回収と支払期間のギャップ、および保有しておかなければならない在庫量によって、「どうしても経常的に必要となってくる運転資金」のことです。
・経常運転資金は、企業内容によっては、「融資当貸枠」などの毎月の約定返済が不要な融資形態に銀行はすることがあります。
・この経常運転資金については、説明が少し長くなりますので、別の回に詳しく解説いたします。
(2)一般的な運転資金
・「売上増加にともなうもの」や「赤字補填によるもの」などで、少し見方は異なりますが、「手元資金が少なくなってきたので」と借りる資金のことです。
・基本的な考え方は、次の通りです。

㈱中西商店がこのような借入状況で、2000万円、5年分割返済の融資申し込みをしたとします。
㈱中西商店の直近決算の業績は、税引後当期利益が1500万円、減価償却費が600万円です。税引後償却前利益は、2100万円です。
<本件後の合計年間返済額>
(本件分)400万円
(既存分)200万円×12か月=2400万円
(合計)2800万円
税引後償却前利益:2100万円 < 合計年間返済額:2800万円
この状態を「利益償還できない」状態と言います。逆に税引後償却前利益の方が大きい場合は、「利益償還できる=返済能力がある」状態となります。
銀行融資の審査では、この「利益償還できるかどうか」が重要な指標になります。
ただし、利益償還できなければ融資が通らないかと言えば、決してそうではありません。むしろ現実的にはそういう企業の方が多いです。
利益償還できない場合、その時点の業績や今後の見込み、ならびに「資金繰り償還」できるか、という観点で融資審査が行われます。
「資金繰り償還」とは、「他の調達手法で返済が可能であるかどうか」ということで、例えば「保証協会の無担保融資枠がいくら残っているか」とか「担保余力がどれだけ残っているか」というようなものです。
(3)季節資金
・季節資金とは、売上に大きな変動がある業種、例えば「カレンダー製造業」のように、夏場以降から製造を始めて、翌年1月~2月頃にかけて一気に売上代金を回収する、といったような業種に対し、売上代金回収までのつなぎ資金として利用される融資です。
・この場合は、過去実績や発注書等で融資金額の妥当性を検証し、業況を加味して審査されます。
(4)決算資金・賞与資金
・最近はあまり見受けられなくなってきたようですが、法人税支払いや賞与支払いに一時的に多額の資金が必要な場合に、6か月や1年程度までの分割返済で利用される融資です。
・必要金額を証する書類等を確認のうえ、業況や実績を加味して審査されます。
2.設備資金
・設備資金とは、生産施設や設備の増強を図るための資金です。
・返済能力の考え方としては、運転資金の(2)一般的な運転資金の利益償還可能かどうかということが基準となりますが、異なる点は、今後の業績見込みを加味することです。
銀行融資の審査では、将来の返済能力も重要な判断材料となります。
・新しい生産施設や設備の導入は、売上や利益を増加さすための目的によるものです。
したがって、今後どのくらい売上や利益が増加していくのかを明示した、「事業計画書」が必要となります。
銀行融資では、この事業計画書の内容が、返済能力の判断を大きく左右します。「どう書けば銀行に伝わるのかわからない」「数字の根拠をどう作ればいいのか悩んでいる」という方は、ぜひ一度ご相談下さい。
今回は以上になりますが、銀行は「売上」や「利益」の額自体を見ているのではなく、「返済できるか」で融資判断をしている、ということです。
今回の説明はここまでです。次回は「⑨銀行の融資判断基準(経営者)~銀行が見る社長の取引姿勢とは~」を解説いたします。








