今までは担当者が何度も訪問してきて、「借りてもらえませんか?」としつこく言っていたのに、めっきり来る回数も減り、対応も事務的に・・・。
加えて「試算表をいただけますか?」など、今まで言われたことのない書類の提出を求めてきた・・・。
このように「銀行が急に態度を変えること」があります。
それがどういう理由によるものなのかを、これまでのブログで触れてきた内容も含め、今回はこのテーマにフォーカスして2回に分けて解説していきます。
1.信用格付で債務者区分が下がった
信用格付や債務者区分については、過去ブログ「銀行融資が通る会社・通らない会社の違い」の第5・6回で詳しく説明しておりますので、ご参照下さい。
例えば、債務者区分が「正常先」から「要注意先」になったとか、「要注意先」から「破綻懸念先」になった場合などでは、銀行の態度がころっと変わります。
債務者区分が下がると、まず貸出金引当率が増加します。そして破綻するリスクが増加するということですから、決裁権限が支店長決裁から本部決裁に変わったりなどして、銀行内の審査のハードルが上がることもあります。
今までは、支店長決裁で融資できるものであれば、支店長が「この資金の売り込みをしてこい」と言えば、担当者はそのまま会社に伝えることができますが、本部決裁になると否認される可能性もあるため、「借りて下さい」とは簡単に言えなくなるのです。
2.決算内容への懸念
「いや、確かに実態としては厳しい決算だったが、決算上は黒字になっているから、債務者区分が下がることはないはずだ。」という経営者もいらっしゃるかもしれません。
ここは、過去ブログ「銀行融資が通る会社・通らない会社の違い」の第3・4回をご参照下さい。
銀行は会社から提出された貸借対照表や損益計算書をそのまま評価するのではなく、実態ベースに引き直します。それに伴って、会社は黒字だと思っていても、銀行は実質赤字と見ている、あるいは資産超過ではなく債務超過と見ている、ということは発生しますので、債務者区分が下がることは十分にあり得ます。
そして「決算の調整」の域を超えて、粉飾決算であると銀行が判断した場合は、事態は深刻です。これは過去ブログ「粉飾決算は銀行にばれるのか?」をご参照下さい。
その場合、度合いや緊急性にもよりますが、銀行が「社長!粉飾決算じゃないですか!」と詰めよることよりも、すっと取引を縮小してこれ以上融資を増やさないことを優先します。
3.メイン行の動向
ここは、長く現場実務を経験した者でしか話せない、なかなか興味深い内容です。
私が過去に勤務していた銀行は、(現在はどうか知りませんが)当時は「非常に堅い銀行」との評判でした。
それゆえ、「その銀行がメイン行で融資シェアを伸ばしている黒字企業ならば、破綻する心配はないだろう。」と、他府県から進出してきた地銀が、無担保融資5000万円をどんどん新規売り込みしてきていたこともありました。
支店長をしていた時、こんなことがありました。
その企業は圧倒的メイン行で設備投資資金も含めて多額の融資をしていました。国内の業況は順調であるものの、中国現法の業績が赤字続きで将来的に会社全体として危険な状況に陥る懸念があったため、「社長、中国現法の撤退も含めて見直しをしませんか?」と伝えに行ったことがありました。
社長はよほど私の提言が気に食わなかったのか、他行に「メイン行の全面肩代わりをしてくれ」と言いに回ったようでした。
その結果、「多額のプロパー融資をしているあの堅い銀行が、先行き不安だと懸念している」と他行は判断して、それ以降積極的に新規プロパー融資をすることはなくなりました。
つまり、「メイン行はよく会社の中身を聴取し理解している」「メイン行だけが知っている情報や実情がある」ということがあります。
従って、メイン行の融資シェアがどんどん落ちてきている時や、メイン行の融資肩代わりが簡単に出来る場合などは、その他の銀行は逆に警戒をします。
銀行の態度が変わる理由は、単にその銀行だけを見ていても分からないことがあります。特にメイン行の動きは、他行の融資姿勢にも大きな影響を与えます。
しかし一方で、会社の業績や財務内容とは全く関係のない理由で、銀行の態度が変わることもあります。次回は「支店長や担当者の交替」「銀行固有の事情」について解説し、最後に「銀行は本当に急に態度を変えているのか?」という本質的な話をしたいと思います。








