銀行融資が通る会社・通らない会社の違い(第6回) ― 元銀行支店長が実務で徹底解説 ―

6.信用格付で正常先以外になったらどうなる

前回の「銀行の信用格付の仕組み」で、債務者区分として、「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」という分類があると解説いたしました。

今回は信用格付で正常先以外に分類されると銀行の融資スタンスはどうなるか、ということについて解説していきたいと思います。信用格付で正常先から外れた瞬間、銀行の融資スタンスは一変します。

前回の末尾にも書きましたが、今回は本ブログのテーマである、「銀行融資が通る会社・通らない会社の違い」の本質的な部分になってきます。どういう仕組みで融資可否の根本的な部分が決まっているのか、ということです。

理解しやすいように、「無担保融資」と「保証協会付き融資・不動産担保融資」に分けて解説いたします。

1.無担保融資
前回、あくまでも一般的な目安として、債務者区分ごとの貸倒引当率を書きました。これはどういうことを意味するのかというと、次の通りです。

「銀行が破綻先(引当率100%)の企業に、新規に1000万円の無担保融資をした場合、融資した時に1000万円を損失計上しなければならない。」

つまり銀行にとっては、「貸した瞬間に赤字になる融資」ということです。

「銀行が要注意先(引当率2%)の企業に、新規に1000万円の無担保融資をした場合、融資した時に20万円を損失計上しなければならない。」

貸出金というのは、銀行の貸借対照表上では「資産勘定」に計上されます。一般的な企業が銀行から融資を受けた場合、借入金として「負債勘定」に計上されるのですが、銀行の場合は貸出金利益という収益を生み出す源泉となるものなので、逆に「資産」となります。

上記の通り、破綻先に対して無担保融資を行うと、銀行は全額を損失に計上しなければならない、いわゆる「不良資産」となります。一般の企業が全額損失になるような商品をあえて販売するでしょうか。絶対にないですね。
したがって実質破綻先・破綻先に対して銀行が無担保融資をすることは、株主に対する背任行為となる可能性があるので、原則はないです。

要注意先の場合はどうでしょうか。事業活動は正常に行っている先なので、この場合は引当率のみでなく様々な要因を加味して融資は検討されます。例えば融資以外での総合取引で収益を得ている先であるのかとか、社長や従業員の個人取引度合がどうであるか、などです。
ただし、あくまでもざっくりとした話をすると、この融資を2%の貸出金利で融資した場合、この融資に対する収益はゼロになりますね。無担保融資の金利が比較的高いのは、こういう理由からによるものです。

2.保証協会付き融資・不動産担保融資
①保証協会付き融資
保証協会付き融資は、融資先が破綻して回収不能になった場合、融資先に代わり代位弁済してくれるので、銀行としては安心な融資です。
ただし100%保証の場合と、責任共有制度という、全額ではなく80%は保証協会が負担するが20%は銀行が負担する、という制度の融資もあります。話が複雑になるので、ここでは割愛して100%保証前提で解説します。

貸倒引当率の関係で言えば、銀行は保証協会付き融資は損失計上する必要はなく、要注意先であっても融資は原則行います。

要管理先、破綻懸念先についても、保証協会付き融資であれば融資するケースはありますが、そもそも、保証協会の審査自体が厳しくなり、通らないケースが多くなります。
保証協会は公的機関でありますが、企業内容等を度外視して保証をする機関ではありません。
「中小企業活性化協議会」案件となった場合は、事業計画作成などの一定の条件のもとで、融資がおりるケースはあります。このあたりは個別事情による部分も大きいため、詳しくは個別にご相談ください。

実質破綻先、破綻先については、保証協会も原則保証をしません。

②不動産担保融資
不動産担保は「評価額=担保額(融資可能額)」ではなく、掛け目や処分コストを考慮した実質評価で判断されます。これについては次回以降で詳しく解説します。

考え方としては、保証協会付き融資と同様です。銀行の担保額の範囲内であれば、要注意先は、融資は原則行います。

要管理先以下では、たいていの場合は、不動産を持っていても既に銀行等へ担保提供しており担保余力がないという状態がほとんどなので、「不動産担保余力はあるが、保証協会の審査が通らない」というケースは実務的にはほぼありません。

いかがでしょうか。
「この事業計画書は渾身の力を込めて書きました!達成には自信があり根拠もこれだけ示してます!保証協会枠は一杯で担保もないですが、なんとか無担保融資でお願いします!」と言われても、その先が仮に要管理先ならば、15%も貸倒引当金を積まなければならないので、一般的には融資するはずはありません。

事業計画書はあるに越したことはないですが、限界があります。どんなに立派な事業計画書があっても、銀行が融資できないメカニズムは今回でご理解いただけたと思います。担当者や支店長が、貸したくても銀行という組織として貸せないのです。

では次回はこれまでのおさらい含めて「⑦銀行の融資判断基準(保全面)」を解説いたします。

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