11銀行の融資判断基準(将来性)~銀行は会社の未来をどう見ているのか~
今回は、銀行が融資判断において「将来性」をどのように見ているのか、ということについて解説したいと思います。
融資の審査では、「今の業績」だけでなく、「この会社が今後どうなっていくのか」という将来性も重要な判断材料になります。特に設備資金や長期融資では、「5年後、10年後も継続して返済できるか」という視点で銀行は見ています。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、銀行は「夢」や「熱意」だけを見て融資をしているわけではない、ということです。
例えば事業計画書を見せながら、
「この新規事業は必ず成功します!」
「売上は3年で2倍になります!」
という説明をされる社長がいます。
もちろん熱意は大切です。しかし銀行が本当に見ているのは、「その計画に実現可能性があるか」ということです。
銀行は「夢」ではなく、「実現可能性」を見ています。
では、銀行はどのような点から将来性を判断しているのでしょうか。
1.業界の将来性
例えば、以下のような点を社長がどこまで理解しているか、ということです。
・市場規模は拡大しているのか縮小しているのか
・競合他社はどう動いているのか
・原材料価格の高騰や人手不足の影響はどうか
・今後どのような変化が起こりうるのか
おおまかな業界動向や今後の市場規模などについては、外部情報により銀行は把握しています。
前回にも書きましたが、社長が業界全体の知識や将来性をどこまで理解しているか、銀行の持つ業界情報と齟齬がないか、さらに一歩踏み込んだ洞察が出来ているかを見ます。
今、業績が良い会社でも、社長が業界の変化を理解していなければ、将来的に対応できなくなる可能性がありますし、逆に、現時点では業績が多少厳しくても、業界動向や自社の立ち位置をしっかり理解している社長は、銀行から一定の評価を受けます。
2.その会社独自の強み
例えば、「その会社にしかない特殊な技術や特許」などのような、独自の強みに対しては、銀行は一定の評価をします。
「お客様に寄り添う」「お客様のニーズに的確に迅速に対応する」などといった一般的・抽象的なものでは、残念ながら評価しません。
画期的な社会イノベーションを生み出せる可能性のある、テック系・バイオ系ベンチャー企業に対して積極的な取り組みをしている銀行があるのはそのためです。
3.事業計画書に数字の整合性があるか
銀行は、事業計画書の「数字」を非常によく見ます。ただし、売上や利益の大きさだけを見ているわけではありません。重要なのは、「数字に整合性があるか」です。
例えば、銀行員時代に「3年後に売上高は2倍の1億円となります。現在は1000万円の経常赤字ですが、2年後には5000万円の経常黒字となります。」というような事業計画書の説明を受けたことがありました。
しかし売上高が2倍になる根拠がぼやっとしていてよくわかりません。マーケットシェアをどこまで伸ばすつもりなのか、既存取引先でどれだけ伸ばし、新規取引先でどれだけ伸ばすのか、新規取引先はどこをターゲットにどれだけ取るつもりなのか、また、それだけできるという根拠は何か、現在新規受注の引き合いが見積書ベースでどれだけきているのか、などの具体的な説明が最低限なければ、銀行はその売上が実現可能とは思いません。
また利益にしても、それだけ売上が増える計画をしているのに人件費が増えていなかったり、原価率や販管費率が極端に下がっていたりと、実態と整合性のないものでした。
「ここまで出来ると考えています!」では、審査する支店長も審査部も通りません。もちろん将来のことは完全に予測できませんが、合理的な根拠を示す必要があります。
したがって、事業計画書を作る際は、「希望」ではなく、「根拠」を示すことが重要です。
また以前ここで書きましたが、どんなに立派な事業計画書があろうと、決算内容によってはどうしても融資できないことはあります。
しかし事業計画書は、その内容によって融資可否の大きな判断材料になることは間違いありません。
「どう書けば銀行に伝わるのかわからない」「数字の根拠をどう作ればいいのか悩んでいる」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
4.自社の弱み等を把握し悪い話ができるか
銀行の融資審査で使われることはあまりありませんが、事業計画書に盛り込まれる会社分析手法として「SWOT分析」というものがあります。
自社の「強み・弱み・機会・脅威」を洗い出し、それにより自社の現状と将来の方向性を把握しようとするものです。ここでは詳細な説明は割愛しますが、銀行が意外と重視しているのが、「自社の弱みや脅威をしっかり把握して、悪い話ができる社長かどうか」です。
社長の中には、良い話ばかりを、だらだらと話があちこち飛びながらする方がいます。
銀行が「いつ、いくらの売上になる予定ですか?見積書はもう出てますか?」などと詳細に聞くと、たいていは全く未確定の話であることの方が多いです。
「なるほど。はいはい。」と銀行員は聞いていますが、決してその話に納得しているわけではありません。「良い話しかしない社長」をあまり信用していません。
例えば、
・この事業のリスクは何か
・売上が想定通りいかなかった場合どうするのか
・原材料価格が上がった場合の対応はどうか
・人材採用がうまくいかなかった場合どうするのか
といった「最悪の場合」をどこまで想定しているかを見ています。
事業を行っていくうえで、どの会社でも「不測の事態」は発生します。「こんなことが発生してしまったから、赤字になってしまった。返済ができなくなってしまった。」では銀行は困ります。
社長が自社の弱み等をしっかり把握しており、不測の事態も想定しているかを、銀行は重視します。
銀行が本当に見ているものは、「この社長は、変化に対応しながら会社を継続させていけるか」ということです。
銀行は、「夢を語る社長」ではなく、「現実を理解したうえで成長戦略を描ける社長」を評価しています。
将来性とは、「夢の大きさ」ではありません。現実を踏まえた実現可能性です。
今回の説明はここまでです。次回は「⑫銀行の融資判断基準(銀行固有の事情)~なぜ銀行によって対応が違うのか~」を解説いたします。








