緊急でブログを書きます。
クレジットカード決済代行会社である「全東信」が7月6日に大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。負債額は約1,151億円とのことです。
本件の内容等については多くの報道でなされていますので、詳細な説明は割愛します。
今回の全東信の破綻は、一見すると決済代行会社だけの問題のように見えます。しかし私は「すべての経営者が学ぶべき資金繰りの教訓」が含まれていると思っています。
元銀行支店長目線で、本件から経営者が学ぶべきことについて、解説していきたいと思います。
1.「売掛金の回収先(売掛先)」はどこなのか?

通常のクレジット決済は、回収(カード会社からの入金)に最長1か月程度かかります。
全東信は、カード会社からの入金を立て替え、早期(5日等)で回収をできるようにする、対価として手数料を徴収する、という決済代行会社です。
ここで重要なことは、「売掛先」がどこであるか、です。
顧客からカードでの支払いを受けた飲食店などの売掛先は全東信であり、カード会社ではありません。
カード会社は全東信に売上代金の支払いは行っているため、飲食店などはカード会社に代金の請求は出来ません。請求できるのはあくまでも売掛先の全東信だけです。そしてその売掛先が破綻してしまった場合、代金の回収が困難となります。
銀行は決算書を見るにあたって、「売掛先」を以下の視点でチェックします。
①一先に集中していないか?
・一先に集中しているということは、経営上の大きなリスクでもあります。
・仮にその売掛先が破綻してしまった場合は、売上代金の回収が困難になります。
・あるいは、その会社からの取引を切られてしまった場合は、たちまちに売上高が激減してしまいます。
②主要な売掛先が頻繁に替わっていないか?
・主要な売掛先が頻繁に替わっているということは、新たな取引先が出来ているという反面、「安定した受注先を確保できない不安定な会社」ともいえます。
2.売掛金に対する回収不能対策は
今回の全東信の破綻は突然で、一般の飲食店などは事前に察知することが困難であったようです。
一般の会社でも売掛先の経営悪化等を察知するのはなかなか難しいです。信用調査会社を使う方法はありますが、調査にも限度があり、また費用面から全売掛先に頻繁に調査をかけるわけにもいきません。
しかし社内でも出来ることはあります。営業担当者や経理からの情報は非常に重要で、経営者まで細かい情報が上がってくる体制を構築するようにすると、貸し倒れを少しでも減らすことができます。
たとえば、営業担当者から「急に社員の数が大幅に減った」「最近工場があまり稼働していないようだ」といった情報や、経理から「数日間の入金遅延が発生するようになった」「今までと振込してくる銀行が変わった」などという情報です。
もちろんそういう売掛先であっても急に取引を中止するわけにはいきませんが、少しずつ取引を減らしていくなど事前に対策が出来ていれば、破綻した場合でも被害は少なくなります。
以上より売掛先について経営者にとってリスクヘッジの観点から重要なのは、次のように言えるでしょう。
“安定した売掛先を、一先に集中させず数社確保できるようにする”
“売掛先の状況が、営業や経理から経営者に伝わる体制を構築しておく”
3.現預金残高はいくら必要か?
あなたの会社は、月商何か月分の現預金がありますか?
売掛先の倒産などの不測の事態が起きた時に、会社を守るものは手元にある現預金です。
銀行でも決算書を見る時に、「月商の何か月分の現預金があるか」は見ています。
事業をするのに必要な運転資金を「経常運転資金」と言い、業種によって大きく異なります。実はこの考え方が今回のような不測の事態に備えるうえで非常に重要です。この点については後日別のブログで詳しく説明する予定です。
例えば飲食店や小売店などの現金商売の業種は少なくて済みますし、建設業などの工事代金回収期間が長い業種は多額になります。
従って業種により異なりますが、一般的には最低でも月商2か月分程度の現預金を保有している状態で経営をするのが望ましいでしょう。
不測の事態が生じてからでは、借入が難しくなることもあります。普段から金融機関借入なども利用しつつ、余裕のある状態で経営をすることが必要です。
4.全東信破綻で学ぶべきこと
決済代行会社の早期入金サービス自体は悪いことではありません。売掛金の回収サイトを短くできたり、資金繰りを改善できるメリットは確かにあります。
問題なのは、「早期入金サービスに頼らなければ会社が回らない状態」になっていないか、ということです。
今回の全東信の破綻で本当に学ぶべきことは、経営者として「売掛先については常に注意を払っておくこと、そして万一売掛金が入金されなくとも会社が持ちこたえられる準備をしておくこと」ではないかと思います。



