リバースモーゲージとハウスリースバックの違い~ハウスリースバックは危険!~

このあたりの話、本を一冊書けるくらいの知識を持ってますのでお話しておきます。

 

昨今のコロナの影響で、リバースモーゲージやハウスリースバックの需要は今後増えてくると思います。

この二つの商品の共通点は、「自宅に住みながらまとまったお金を調達できる」という点です。

コロナの影響で会社も余裕がなくなり、高齢者の社員が解雇されたり減給されたりしているという話をよく聞きます。

「家」という資産はあるが、今後生活していく上での現金が足りない、家を売却してしまえば住むところがない・・・残念ながらこのような高齢者の方は増えていくと思います。

 

この悩みを解消する商品としてあるのが、リバースモーゲージとハウスリースバックです。しかし、この二つは似て非なるものです。使い方を間違うと、とんでもない不幸な目に遭います。

 

今回はごく簡単にですが、そのあたりを説明していきます。

 

  1. リバースモーゲージ

 

リバースモーゲージといっても色々な種類があり、一概に定義することは難しいのですが、主に利用される方法が「自宅を担保にした融資制度で、高齢者が自宅を手放すことなく住みながら融資を受け、生存期間中は利息のみの支払い、死亡後に自宅を売却して元金一括返済を行うもの」と言えるでしょう。

 

通常の住宅ローンなどの借入は、借りたお金の元利金返済を毎月行い、数十年かけて元金の返済を終了します。このリバースモーゲージは元金の返済が原則生存期間中ないのが特徴です。高齢者の方は毎月の収入が現役世代のように多くありません。だから「借入中は利息のみの支払いでいいですが、その代わり死んだ時に自宅を売却して元金は一括して返して下さいよ」というのがリバースモーゲージです。

 

ここで一つ目のポイントですが、リバースモーゲージは「融資」であるということです。したがって契約の相手方は「銀行」等の金融機関です。どの銀行から借りるかで条件も異なってきます。

融資なので、最初の契約通りに毎月利息の支払いをきっちりしていけば、「家を売って出ていけ」と言われることはありません。

 

そして二つ目のポイントですが、「思っているほど借りられない」ということです。元金が自宅売却による一括返済なので、貸す銀行側からみれば「いつお客様が亡くなるかわからない、20年後、30年後になるかもしれない」という考えから、担保に取る自宅の価値を現在の相場からかなり低めに見ます。例えば現在の自宅の価値が3000万円だったとしましょう。借りれてその半分の1500万円と見ておいた方がいいです。それ以上の借入が出来る場合は、借入限度額の見直しが毎年か数年ごとに行われるケースがほとんどなので注意が必要です。限度額の見直しがあると、それまで例えば2000万円借りているのに、「限度額が1800万円になりましたので、200万円一括返済して下さい」と言われることがあります。

 

三つ目のポイントが、「借入出来る人の条件が多い」ということです。例えば年齢が60歳以上、配偶者がいる場合は配偶者の年齢も60歳以上、同居の親族がいないこと、等々が各銀行によって異なるものの、色々あります。後で説明するハウスリースバックには、これがほとんどありません。

 

  1. ハウスリースバック

 

ハウスリースバックを定義するとおおむね「自宅を不動産業者に売却し、まとまった資金を手に出来た後、賃料をその不動産業者に支払って、そのまま家に住み続ける方法」と言えるでしょう。

 

一つ目のポイントですが、ハウスリースバックは家の「売買」であるということです。リバースモーゲージは融資なので所有権の移転は発生しませんが、ハウスリースバックはもう自宅は自分のものでなくなるという点が大きく異なります。

 

二つ目のポイントは賃料です。リバースモーゲージの借入利率はおおむね3~5%台ですが、ハウスリースバックの賃料は買取価格の8~10%程度が通常です。なお、先ほどリバースモーゲージの融資額は時価の多くて50%と書きましたが、ハウスリースバックは時価の60~70%となるケースが多いです。

 

三つ目のポイントは、リバースモーゲージと比べて利用できる人の条件がかなり少なく、時間的にも早く手続き出来るという点です。

 

  1. 具体的な事例

 

わかりやすいように具体的な事例をあげて説明しましょう。

<事例>

時価が3000万円の自宅を所有しています。夫68歳、妻65歳の二人暮らしです。しかし生活が苦しくなってまとまったお金が必要になりました。子供たちは独立しているので、将来的に二人が亡くなった時は自宅は売却してもいいと考えています。

 

<リバースモーゲージを使った場合>

調達可能額・・・1200万円~1500万円

毎月支払額・・・3万円~6.3万円

 

<ハウスリースバックを利用した場合>

調達可能額・・・1800万円~2100万円

毎月支払額・・・12万円~17.5万円

 

  1. ハウスリースバックは危険

 

ハウスリースバックを頑張って販売している不動産業者の方に怒られそうですが、クライアントのため事実をお伝えするのがコンサルタントの仕事です。

上記の具体的な事例でおわかりのように、リバースモーゲージは借入出来る金額は少ないですが、この毎月支払額なら年金でなんとか返済していけそうですね。

けれどハウスリースバックで例えば2100万円を手にしたとしましょう。毎月17.5万円も支払ったとしたら、その2100万円を仮に何も使わなかったとしても10年で底をつきます。手元にお金が無くなったらどうなるのでしょう?家から出ていかなければならないのです。もうその家は自分のものではないのですから。まして「今、お金が必要」という人が使う商品です。住めて5年がいいところでしょう。

そして冷静になって考えると、17.5万円も賃料を払うのなら、そこそこいい賃貸物件に住めますよね。

ならばたった5年自宅に住み続けるために今3000万円で売れる物件をわざわざ2100万円で売ることにどれだけのメリットがあるのでしょう?3000万円で今売って、家賃10万円程度の賃貸物件に住むほうがよほど余裕のある暮らしが出来ると思います。

 

ではなぜリバースモーゲージよりハウスリースバックの方が宣伝もたくさんしているのでしょうか?・・・これ以上は、ここではもう言わずにおきます。

 

ハウスリースバックはリバースモーゲージを利用できない人や、「数年内にまとまったお金が入ってくるが今お金が必要で、お金が入ってきた時にこの家を買い戻す契約をしたうえで利用する」といった人にはいい商品かもしれません。

また不動産業者によっては、賃料がもっと低いケースもあるようです。

 

けれど利用に際しては、以上のようなことを参考にされてよく考えられることをお勧めいたします。

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