順番が前後してしまいました。
今回は一般的な銀行・信用金庫等とは少し異なる、日本政策金融公庫(以下、「公庫」と略)と商工中金について解説していきます。
1.日本政策金融公庫
(1)概要
・株式会社日本政策金融公庫法に基づいて設立された政府が100%出資する財務省所管の特殊会社で、「政府系金融機関」です。まずここが私企業である一般の銀行等の民間金融機関と大きく異なる点です。
・その役割は、民間金融機関と競争することではなく、民間金融機関の融資を補完することにあり、(とは言っても現役銀行員時代は、「公庫の方が金利が安いので」と融資を売れなかったことは何度もありましたが)具体的には概ね以下の通りです。
①民間金融機関の補完
実績や担保が乏しく、民間金融機関だけでは資金調達が難しい企業を支援する。
②創業・新事業の後押し
過去の実績がない創業者や、新しい事業に挑戦する企業へ政策的に資金を供給する。
③中小企業・小規模事業者の育成
資金供給を通じて、雇用、地域経済、産業の発展を支える。
④危機時のセーフティネット
災害、感染症、景気悪化などの際に、緊急融資によって企業の資金繰りを支える。
(2)利用するメリット
①創業融資が使いやすい
・民間金融機関だけで創業資金の全額を調達するのは、現実的には難しいケースが多いですが、公庫は比較的借りやすいのが特徴です。
・「創業計画書」など所定の書類の作成が必要ですが、事業を開始しようとするならば、その程度の作成は必須のものです。オンラインセミナー等もあるようですし、ご自身で作成するのに不安がある場合は、当社までお気軽にご相談下さい。
②金利が固定金利で比較的低い制度が多い
・昨今、長期金利がかなり上がってきていますが、公庫の場合は、一部の制度を除き、原則として固定金利です。変動金利だと将来的な金利上昇リスクがありますが、公庫はその不安がありません。
・「基準金利」自体はさほど低くなくとも、そこから何らかの優遇幅がある場合が多いです。
・また「緊急融資」は、かなり低金利の借り手にとっては好条件になる傾向が強いです。
③長期借入を組みやすい
・運転資金は制度によっては、運転資金でも10年程度の長期返済が可能です。返済計画にあわせてある程度考慮してくれます。
・民間金融機関と比べて、「返済据え置き期間」も柔軟に対応してくれるのが特徴です。例えば創業時やあるいは新商品開発事業資金の場合、売上が計上できるまでに半年~1年かかるというような合理性がある場合は、その間の返済を据え置いてくれるケースが多いです。
④信用保証協会の保証が不要
・民間金融機関と違い、信用保証協会の保証が不要なので、保証料負担がありません。
・加えて、「無担保・無保証」の制度もあります。
(3)利用するデメリット
①メインバンクにはならない
・利用に対してのデメリットはほぼないのですが、あくまでも立ち位置は「民間金融機関を補完する」機関です。創業資金を公庫で借入したとしても、その後は基本的には民間金融機関で借入をして、メインバンクを作ることが必要でしょう。
・また公庫に預金口座は作れません。借入の返済口座は民間金融機関の口座になります。
②要件適格性は厳格
・融資制度ごとに要件があります。該当していない場合は利用できないので、その審査は厳格です。
(4)上手く公庫を利用するポイント~緊急融資はタイミングによっては借りやすい~
・ここは実際に銀行員やコンサルタントを経験してきた者の“肌感覚”も含めてお話します。
・先に述べたように公庫は「政府系金融機関」です。つまり、「政府のその時々の意向」が運用面で反映されやすいのが特徴だと言えます。
・たとえばコロナ禍の時期に公庫も緊急融資を出していました。取扱開始した頃の審査基準は、コロナという未知のウイルスが今後どのような脅威を社会経済にもたらすのかが全く見通せないという状況でしたし、言葉を選ばずにいえば、平時と比べて相当に利用しやすい審査運用だったというのが私の実感です。
・ただし、コロナの実態等がだんだん判明してきて、ワクチンが出来たころになると、審査基準は通常に戻っていましたし、もっと後になるとかなり審査基準が厳しくなっていると感じたことがありました。
・つまり、公庫の緊急融資には、「旬」があるのです。別の緊急融資で、私のクライアントが融資申し込みに行った時も、「1000万円でいいですか?もっと借りなくても大丈夫ですか?」と言われたほどです。公庫が出す情報はよく見ておくべきですし、タイミング良く申し込みをすることが肝要です。
2.商工中金
(1)概要
・正式名称は株式会社商工組合中央金庫です。元々は政府系金融機関でしたが、2025年6月に政府保有株式が全て売却され、政府は株主ではなくなりました。現在、政府は株主ではなく、民間株主を中心とする金融機関となっていますが、法律上の目的や危機対応業務など、公的性格は一定程度残っています。
・公庫とは違い、預金業務や国際業務など一般の銀行業務とほぼ同様の業務を行っています。
(2)利用するメリット
①中堅企業向けの比較的大口融資に強い
・小規模・零細企業よりも、一定の規模や実績を持つ中小・中堅企業の比較的大口案件に強い印象があります。
②「業界団体の制度融資」がある~私が最大のメリットと思う点~
・「トラック運送業」「通運事業」「バス事業」「自動車整備業」「造船関係事業」については、当然に審査はありますが、各業界団体からの推薦・斡旋を受けた企業は、制度に応じて比較的有利な金利や利子補給を受けられる場合があります。
③案件にチャレンジする姿勢
・そしてこれは“肌感覚”ではありますが、民間銀行では難しい案件もチャレンジしようとする「昔ながらのバンカー」としての気質を持っていると感じます。事実、私のクライアントでも民間銀行では断られた案件を融資してくれたことがありました。
(3)利用するデメリット
①一定の企業規模や実績が必要
・メリットとは逆に、一定の企業規模や実績がないと、利用できない傾向はあるように感じます。
②信用保証協会の保証を求められる場合がある
・また、公庫とは違い信用保証協会の保証を求められることもあります。
従って業界団体の制度融資を利用できない企業にとっては、商工中金をあえて第一選択とする必然性は薄いかもしれません。ただし、民間銀行では対応が難しい案件や、比較的大口・長期の資金調達では、相談する価値のある金融機関だと思います。








